各家庭の太陽光・蓄電池を束ね、1つの発電所のように動かして収益化する——VPP事業の全体像と、ハチドリの挑み方を整理した資料です。
VPP=Virtual Power Plant(仮想発電所)。バラバラの小さな電源を通信で束ね、1つの発電所のように動かす仕組み。
電気の4つの価値をそれぞれの市場で売る。1つの発電設備から重ね取り(バリュースタッキング)できるのが旨味。各市場の特性はこの1枚で。
VPPの本当の価値は、収益構造を「売って終わり」から「運用して稼ぎ続ける」へ変えること。
市場規模:住宅太陽光の先にある蓄電池・HEMS・VPP・電力運用を含むエネルギー関連は年約40兆円。「太陽光を売る」から「運用する企業が握る」時代へ。
VPPは「束ねる母数」と「制御」を持つ者が勝つ。ハチドリは両方を住宅事業で既に持っている。
VPPは新規事業ではなく、住宅フロー事業の必然的な出口。0円ソーラーで積んだ設置ストックを「i-Power Engine」で束ね市場に売る。FY28で初収益、FY29からストック成長ドライバーへ。
| VPP関連トラジェクトリ | FY2026 | FY2027 | FY2028 | FY2029 | FY2030 |
|---|---|---|---|---|---|
| VPP・容量市場 売上(億円) | — | — | 初収益 | 0.5 | 2.0 |
| 累計設置件数(戸) | 1,862 | 2,424 | 3,273 | 4,483 | 6,053 |
| 売上合計(億円)/ 営業利益率 | 7.7 / 3.9% | 13.1 / 8.5% | 20.4 / 9.8% | 29.2 / 10.5% | 38.0 / 11.0% |
※売上合計・営業利益率は政策金融公庫提出PL(保守シナリオ・中期成長戦略v4 2026/6)ベース。社内ストレッチ目標(住宅単体 FY26 12.5億 等)とはレイヤーが異なる。VPP・容量市場売上と設置件数は本資料の試算。
住宅事業で太陽光+蓄電池を普及して母数を積み、i-Power Engineで1つの発電所のように束ねて4市場で収益化する。市場ごとに「家で起きること・IPEの役割・売る相手」を具体化。
| 市場(売る価値) | 家(太陽光+蓄電池)で起きること | i-Power Engine が束ねて行うこと | 収益・売る相手 |
|---|---|---|---|
| ① Jクレジット 環境価値 |
蓄電池で昼の太陽光を貯め自家消費を最大化。CO₂ゼロの電気の使用量が積み上がる | 全戸の自家消費kWhを遠隔計測・集計し、CO₂削減量をプログラム型で束ねてJ-クレジット認証・売却 | 約5,000円/戸·年(≒2円/kWh) FIT接続でも今すぐ/脱炭素needsの購入企業へ |
| ② 容量市場 kW|供給力 |
普段は通常運転。年最大12回・1回3時間の発動指令時だけ蓄電池を一斉放電+需要抑制 | 200-300戸を1MWに束ね発動指令電源として応札。指令を受けたら全戸を遠隔で一斉制御して供給力を実証 | 契約kW × 約定単価(FY28-29 約1.5万円/kW) 稼働は年数回でも固定収入/OCCTO |
| ③ 需給調整市場 三次②|ΔkW |
TSO指令に応じ、蓄電池が応動60分で充放電。需給のズレをリアルタイムに埋める | 1MWに束ね蓄電池群をフリート制御。前日入札→当日指令に追従し、計画値同時同量を達成 | ΔkW × 時間 + kWh 蓄電池の"速さ"が武器/一般送配電(TSO) |
| ④ JEPX kWh|電力量 |
昼の安い時間に系統から充電、夕方の高い時間に放電・売電(安く貯め高く売る) | 市場価格を予測し、全戸の蓄電池の充放電タイミングを最適化してスプレッドを取りにいく | スプレッド 15〜25円/kWh 非FIT/卒FIT電気のみ/JEPX(卸市場) |
各市場は運用の"回し方"が違う。①②は「貯めて年次で確定」の低頻度・省人型、③④は「毎日トレーディング」の24時間・体制型。IPEが自動化する部分と、人(VPPオペレーター)が判断する部分を分けて整理。
| 市場 | 参加準備(初回・年次) | 運用サイクル(IPEが日々回す) | 精算・頻度・体制 |
|---|---|---|---|
| ① Jクレジット 環境価値 |
J-クレジット制度にプログラム型で一括登録(住宅太陽光・自家消費分) | ① IPEが全戸の自家消費量(発電−売電)を常時計測・蓄積 → ② 年次でモニタリングレポートを自動生成 | 第三者検証→認証(t-CO2)→東証/相対で売却→顧客還元 年1回・省人 |
| ② 容量市場 kW|供給力 |
オークションに供出可能kWで応札(4年前ルール)。実効性テスト対応 | ① 平常は待機(供出力を維持・監視)→ ② 発動指令(年最大12回/1回3h)で全戸蓄電池を一斉放電+需要抑制 | 供出実績を報告→OCCTO精算・未達ペナルティ管理 応札=年次/発動=年数回 |
| ③ 需給調整市場 三次②|ΔkW |
プレクオリ(実働試験)通過・取引会員登録 | ① 前日11:30-14:00にΔkWを入札 → ② 当日TSO指令を応動60分でフリート制御・追従、計画値同時同量 | 実績を1σ基準で評価→精算 毎日入札+24h体制(オペレーター2名昼夜交代) |
| ④ JEPX kWh|電力量 |
会員登録・非FIT電源の区分計量 | ① 翌日スポット価格を予測→昼充電/夕放電の充放電計画を全戸最適化 → ② ゲートクローズまでに売買入札→当日IPEが実行・インバランス回避 | JEPX精算 毎日(前日入札+当日実行)/価格アナリスト+SE |
需要家を①既存FIT(現行サービス)/②非FIT新サービス(FY27ローンチ)/③卒FIT取り込み(FY28パイロット)の3つで管理。FY26–27は仕込み(収益ゼロ)、VPPマネタイズはFY28開始。設置累計を母数に、VPP対象はその制御可能サブセット。収益=万円·年グロス試算
| 区分 | FY2026 | FY2027 | FY2028 | FY2029 | FY2030 |
|---|---|---|---|---|---|
| 需要家数(累計戸数) | |||||
| 累計設置件数(全体母数) | 1,862 | 2,424 | 3,273 | 4,483 | 6,053 |
| └ うち VPP制御可能戸数(3セグメント内訳) | |||||
| 1. 既存顧客(FIT活用・現行サービス) | 300 | 500 | 700 | 900 | 1,000 |
| 2. 新規顧客(非FIT新サービス・FY27〜) | — | 200 | 500 | 1,500 | 2,400 |
| 3. 卒FITユーザー(蓄電池後付け・FY28〜) | — | — | 100 | 200 | 600 |
| VPP対象 合計戸数(浸透率) | 300(16%) | 700(29%) | 1,300(40%) | 2,600(58%) | 4,000(66%) |
| セグメント別 VPP収益(万円/年・グロス試算) | |||||
| 1. 既存FIT|①Jクレ+②下げDR | — | — | 565 | 970 | 1,500 |
| 2. 非FIT新規|①〜⑤フル価値 | — | — | 405 | 3,560 | 14,800 |
| 3. 卒FIT|①〜⑤+⑥非化石証書 | — | — | 80 | 470 | 4,000 |
| VPP収益 合計(億円) | 仕込み | 仕込み | 0.11 | 0.50 | 2.03 |
| 戸当たり収益(FY30時点・グロス) | 既存FIT 約1.5万円/戸・年 / 非FIT新規 約6.2万円/戸・年 / 卒FIT 約6.7万円/戸・年(算出根拠はP.11) | ||||
| マイルストーン | Jクレ準備・RA選定 | ★非FIT新サービス開始 | ★1MW到達・容量市場初収益/卒FITパイロット | 需給調整参入(三次②) | AC昇格・フルスタッキング |
前ページのセグメント別収益を市場(収益源)別に組み替えた内訳。FY26–27は仕込み(収益ゼロ)。FY28にFIT可の①②が先行着火し、非FIT発電設備が積み上がるFY29以降に③④⑤が立ち上がる。万円/年・グロス試算
| 収益源(対象セグメント) | FY2026 | FY2027 | FY2028 | FY2029 | FY2030 |
|---|---|---|---|---|---|
| ① Jクレジット(自家消費・FIT可|全セグメント) | — | — | 650 | 1,300 | 2,000 |
| ② 下げDR(容量市場・FIT可|全セグメント) | — | — | 400 | 1,500 | 4,000 |
| ③ 容量市場(フル放電|非FIT・卒FIT) | — | — | — | 1,000 | 6,000 |
| ④ 需給調整市場(三次②|非FIT・卒FIT) | — | — | — | 1,200 | 6,000 |
| ⑤ JEPXアービトラージ(非FIT・卒FIT) | — | — | — | — | 2,000 |
| ⑥ 非化石証書(卒FITのみ) | — | — | — | — | 300 |
| VPP収益 合計(億円) | 仕込み | 仕込み | 0.11 | 0.50 | 2.03 |
前2ページの収益は、すべて「1戸あたり単価(円/戸·年)× 対象戸数」で積み上げている。単価の根拠と、各年の対象戸数を明示。単価はグロス・ハチドリ取り分前/戸数は各収益源の要件を満たす対象戸
| 収益源 | 単価 円/戸·年 |
単価の根拠 | FY2028 | FY2029 | FY2030 |
|---|---|---|---|---|---|
| ① Jクレジット | 5,000 | 自家消費の環境価値 ≒2円/kWh。束ねてJクレ化(実例ニチコン1,200円/戸〜を拡大) | 1,300戸 →650万 | 2,600戸 →1,300万 | 4,000戸 →2,000万 |
| ② 下げDR | 10,000 | 容量市場 発動指令(下げDR)。蓄電池保有戸が対象・FITのまま可 | 400戸 →400万 | 1,500戸 →1,500万 | 4,000戸 →4,000万 |
| ③ 容量市場フル | 30,000 | 2.5kW供出 × 約11,134円/kW·年(OCCTO FY28約定)。非FIT放電 | — | 330戸 →1,000万 | 2,000戸 →6,000万 |
| ④ 需給調整② | 15,000 | 三次調整力②・中位ケース(1.25kW × 応札時間 × 単価)。非FIT | — | 800戸 →1,200万 | 4,000戸 →6,000万 |
| ⑤ JEPX | 10,000 | 蓄電池アービトラージ。スプレッド15〜25円/kWh。非FIT/卒FIT | — | — | 2,000戸 →2,000万 |
| ⑥ 非化石証書 | 5,000 | 卒FIT売電の証書価値。卒FIT世帯のみ | — | — | 600戸 →300万 |
| VPP収益 合計(億円) | 0.11 | 0.50 | 2.03 |
容量市場(kW)・需給調整(ΔkW)・JEPX(kWh)で売る"容量"は、太陽光パネルの容量ではなく蓄電池の放電性能で決まる。標準10kWh機からの供出前提を確定。
| 市場 | 単位 | 供出量を決めるもの | 1戸供出(保守/中位) | 制約・根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 容量市場 | kW 供給力 |
蓄電池の放電出力 − 在宅リザーブ | 2.0 / 2.5 kW | 3時間持続=2.5kW×3h=7.5kWh ≤ 実効9.0kWh ✓(発動日は前日満充電) |
| 需給調整市場 | ΔkW 調整力 |
蓄電池の双方向の応動幅 | 1.0 / 1.25 kW | 上げ/下げ両方向を確保 → 供出kWの約半分。応動60分 |
| JEPX | kWh 電力量 |
蓄電池の1日サイクル可能量 | 4.0 / 5.0 kWh | 実効9.0kWhから往復効率・自家消費サイクルを控除した市場帰属分 |
「アグリゲーター」の正体は電気事業法上の特定卸供給事業者。市場と直接取引する“AC”になるにはこの届出が必須(=届出制。許可制より障壁は低い)。1社でAC兼RA可能。
分岐点=特定卸供給事業者の届出(供給能力1MW超・経産大臣・開始30日前)。RAだけなら不要、市場直接取引には必須。
住宅DERが売れる4市場。自家消費分のJクレジットはFIT接続でも今すぐ可(⭕)。一方JEPX・容量/需給調整のフル価値はFIT電気を売れず、蓄電池の非FIT運用 or 卒FIT/自家消費型が入場条件。
| 市場 | 価値 | 最低規模 | 必要な棟の条件(FIT可否) | 価格水準 | 1戸/年の目安 |
|---|---|---|---|---|---|
| 容量市場 発動指令電源 |
kW 供給力 |
1MW〜 ≒200-300戸 |
蓄電池放電 or 下げDR(非FIT運用)FIT発電× | FY29 約1.5万円/kW 年度変動大 |
〜3万円 2.5kW·中位グロス |
| 需給調整市場 三次調整力② |
ΔkW+kWh 調整力 |
1MW〜 | 蓄電池・応動60分・簡易指令(低圧は26年度〜)FIT× | 3.30円/ΔkW·30分 FY24平均 |
数千円 戸別非開示 |
| JEPX アービトラージ |
kWh 電力量 |
実務は 束ねる |
蓄電池・売る電気が非FIT/卒FITFIT電気× | スプレッド 15〜25円/kWh |
自家消費 最適化と別 |
| 環境価値 Jクレジット/証書 |
環境価値 | 束ねれば 規模不問 |
自家消費→Jクレ/卒FIT売電→証書自家消費○ FITでも今すぐ余剰売電× | Jクレ〜6千円/t ≒2円/kWh |
実例1,200円 ニチコン |
③④⑤⑥(市場フル価値)には非FIT/卒FITの発電設備が必要。集める道は3つ。本命は住宅事業をFIT余剰売電 → 自家消費最大化+VPPへ転換すること。
買電30円 > FIT売電16円 — 自家消費率が高ければ非FITの方が顧客経済性は良くなり得る。既存TED(Total Energy Design)「売電ツールでなくエネルギーデザインを届ける」思想の延長線上。
前提:5kW/10kWh/消費450kWh・月。非FITで生まれる新収益プールを顧客に30%還元しても、顧客は得・会社もマージン確保。
FITの状態が違う3セグメントを、それぞれ別サービスで"制御可能な発電設備"に変え、すべて i-Power Engine で束ねてVPP収益化する。
3セグメント × 制度 × 市場収益を、FY2026–2030の時間軸に落とす。★=必達マイルストーン。